Subの運命

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過去に引き戻された俺を現実に呼び寄せたのは木島の声だった。 「あんたいきなり何言ってんだよ」 怒りを孕んだその声はパニックに陥りかけた俺を落ち着かせた。危うくSubDropになりかけていた。冷や汗が背を伝うのを感じる。馬鹿か俺は。もう二度とDomになんか飲まれてたまるかよ。ふーっと長い息をつく。そして勢いよく捕まれた手を振り払った。 相手はこの場の頂点にいるDomだ。喜ばれはすれどもまさか振り払われるなんて思ってもいなかっただろう。簡単に離れたその手の主は目を丸くしていた。 『その話お断りします。行こう、木島』 出来るだけ冷静な表情を声を心がけてそう打ち込んだ画面を見せた。会長に背を向けた、集まっていたたくさんの視線が一斉に息を飲んだ音を聞いた。ただのSubごときが生徒会長様からのありがたいお誘いを断るなんて誰も思っていなかったんだろう。他のSubなら喜んでいるのだろうか。だがあいにく俺は普通のSubじゃない。普通じゃいられなかった。 生徒会長を睨み付けていた木島はおう、と短く返事をして同じように背を向けた。 「おい待て」 再び呼び止められる。だけど今度はその声に明らかな怒りが含まれていた。それでも振り返らないでいると肩を掴まれる。その強い力に思わず少し顔が歪んだ。 「もう一度言う。俺のSubになれ」 離してくれそうもないので仕方なく振り返る。 『何度でも言います。お断りします』 あえて少しずらすようにしていた目線を合わされる。その瞬間グレアがどっと俺を包む。隣に立っていた木島が小さく呻いた。周囲にも影響が及ぶほどのグレアを出されている。 跪けと本能が叫ぶ。 「なぜだ」 なぜ?どこまで傲慢なんだ。初対面のやつにそんなこと言われて嬉しいやつがいるかよ。Subだからって舐めんじゃねえよ。 二度とDomなんかにいいようにされてたまるか。Subを物扱いし、己の所有物にする。そんなDomの命令なんかいらない。もし万が一必要に駆られたときは、俺が俺のために生きることを許してくれる、そんなDomになら膝をつこう。まあそんなやつ存在しないだろうけれど。 震えそうになる膝を叱咤して、くっと顎をあげる。真正面から生徒会長と目を合わせた。 これから先、もし俺が膝をつくとしたらそれは――― 『俺を跪かせられるのは極上のDomだけだ』
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