Subの運命

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Subの運命

全校レクリエーション。なんでこんなにめんどくさい行事が存在するんだろうか。まあ入学してから1ヶ月、クラスでの親睦を深めるのが目的なんだろうけどさ。 『やりたいやつだけでやればいいじゃん』 朝から愚痴る俺に三咲が苦笑する。テーブルにぐだーっと伸ばした腕を避けてスープの皿がことりと置かれた。 「まあまあ、そう言わないで?こういう行事って役持ちの人たちが活躍するのを見れる機会なんだよ」 ちょっとわくわくした様子の三咲に俺はますますぶすくれた。 今回の行事はスポーツレクリエーション大会。いくつかの競技をクラス対抗で行い、勝ち点を競う。 役持ちの方々にはスポーツ万能な人もたくさんいるそうで、普段滅多にお目にかかることができない1年生はこの行事を楽しみにしている、らしい。 最も例外はいるもので俺や木島はその一人だ。俺も木島も運動は苦手じゃない。むしろ得意な方だ。この間やった体力測定なんかは木島も俺もクラスでトップ5には入っていたはずだ。じゃあなぜスポーツレクリエーション大会が嫌なのか。それは一重にめんどくさいから。アイドルのコンサートかなにかみたいにキャーキャー黄色い声(なんで男子校なのに黄色い声が聞こえるんだ?)が飛ぶ環境も、無駄に集まる視線もめんどくさい。 ちなみに体力測定の後、俺も木島も2、3人から告白された。木島は確かに男らしくてかっこいいし、俺自身もまあ平均よりかは整った顔をしている自覚はある。だけどちょっと運動したくらいでこんなに注目を集めていたら敵わない。俺は静かに学校生活を過ごしたいのだ。 いつも通り三咲に作ってもらった栄養バランス完璧の朝ごはんをありがたく食べ、いつもと違い制服ではなく指定のジャージで体育館に向かう。 たらたら歩いていると三咲に急かされる。欠伸をしながら歩いていると後ろから声がかかった。 「おはよ」 「おはよう」と口を動かすと木島が頷いて、三咲と反対側の隣に並んだ。 「木島おはよう」 「おはよう三咲」 入学後しばらく三咲が毎日俺の教室に迎えに来ていたものだから、三咲と木島も知り合いになり、今では3人で昼飯を食べたりもする。 「あ、俺行ってくるね!木南も木島も頑張ってね!」 「おー」 クラスの友達を見つけたらしく三咲が駆けていく。去り際にかけられた言葉に木島が怠そうに、俺もひらひらと手を振って答えた。 体育館につくと、クラスの列に木島と隣り合って並ぶ。また欠伸をすると木島もつられたのか大きく口を開けた。 「眠そうだな」 『本読んでたら止まらなくなって。木島も眠そうじゃん』 「ギター弾いてたら止まらなくなった」 『夜中弾いてて音大丈夫なの?』 「同室のやつは人んとこ遊びに行ってた」 かったるそうに話す俺たちとは正反対に、周りはわくわくしたようすで興奮ぎみに喋っている。まあ楽しむのはいいことだよな。いいことだよ、俺に関係なければさ。 「試合何時からだっけ」 『わからない。第2試合だって聞いたけど』 俺も木島もバスケに出ることになっている。俺は声が出せないから連携出来ないぞと抵抗したけどダメだった。これは木嶋のせいだ。1度は逃れかけた俺だけど木島が、1人だけ逃げるのは許さないとばかりに「俺がフォローする」と言いやがったのだ。睨み付けるとにやっと笑って見せたのを俺は今でも恨んでいる。 まあ、やるからには勝つ。これは俺の信条だ。どうやら木島もそうらしく、ダルそうにしていながらも負ける気はない様子だ。 そうこうしているうちに開会式が始まった。まずは生徒会長による開会の挨拶。またグレアを出されるかと思ったが今日は何もなかった。身構えていたのが拍子抜けだ。入学式のはなんだったんだろう。 最初だから威厳を見せつけてやろうとかいう感じか?どちらにせよ最悪にはかわりないけど。
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