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Subたちの内緒話
クリスマスの後、三咲と顔を合わせたらお互いの首に見慣れないものが巻かれていた。
「木南はチョーカーにしたんだ?」
「真貴さんが選んでくれた。三咲は…リボン?」
「チョーカーほどしっかりしてないけど、ネックレスより首輪っぽいを目指した」
「なるほど。似合ってる」
「木南もそれいいね。まじで木南の猫っぽさが際立つ」
どうやら考えることは同じだったらしい。三咲の首には淡いブルーのリボンチョーカーが巻かれている。俺の首にも黒いチョーカーが巻かれているのと同じように。
結城先輩も3月で卒業してしまう。やはりcollarの代わりになるものを贈ってくれたのだろう。
「やっぱこれ落ち着くよね」
三咲が首元を触りながら言うのに同意する。
「Subを実感するよな」
「ほんとね。首輪とかちょっと抵抗あったんだけどなー」
「犬かよとか思ってたもんな、俺…」
「あははっ、いやでもわかるー。人的にどうなの?とか思ってたんだけど、欲しくなっちゃった」
「なんて言うか……安心感?」
「それ!あとは満足感」
「独占欲が満たされる……」
「ほんとそれ!所有されてんのは形式的にはこっちなのにね」
二人で深く頷きあう。これはSubにしか、というかパートナーを得たSubにしかわからない感覚なのだろう。絶対に付けるものかと思っていたcollarがこんなに安心感を与えてくれるものだなんて。
「っていうか首輪っていう言い方が悪いんじゃない?」
「確かに。なんかこう、生々しいというか俗っぽいというか」
「ね。ペットみたいな言い方するからダメなんだよ。こっちにとっちゃ指輪みたいなものなのにさ」
「でも見た目は完全に首輪だからなー……」
専門ショップにあった商品を思い出す。見た目や材質は様々で、革のものから金属のものまであった。美しい細工が施されているものもあったが、身につけてしまえば首輪に見えるものがほとんどだ。
「ねぇねぇ、木南はどんなcollarがいい?」
「んー、どんなって言われてもなー。三咲は?」
「俺はねー、ごっついやつがいい。革のやつ」
「うわ、出たよ。見た目詐欺」
「ふふ、でもやっぱりいかにも首輪!ってやつのほうが好き」
「言ったそばから結局首輪なんじゃねーか!」
「だってしょうがないよねー」
うふふと可愛く笑いながら、全く可愛くない発言をする三咲に思わずツッコむ。見た目は可愛らしいだけに、この首にいかにもな首輪が嵌っているところを想像すると犯罪臭がすごい。
「で?木南は?」
「首輪なー、うーん」
「木南はシルバー似合うよね」
「なんだよそれ……まあ細めのやつがいいかな。重いと疲れるし。でも自分じゃ外れないやつがいい」
「うわ、えげつない……」
「お前よりマシだろ!」
「いや木南のがアレだって。その顔でその発言は…ねぇ?」
「そっくりそのまま返す!」
ギャーギャー言っていると隣の部屋から壁ドンされて、ビクッとなった。騒ぎすぎたらしい。三咲も申し訳無さそうな顔をして首を竦めている。
その壁ドンのおかげで首輪談義は一時休戦となったのだった。
~後日談 Domたちの秘密会議~
「そういや三咲は革のゴツい首輪がいいらしいぞ」
「まじかよあいつ。最高だな……」
「お前らちょっとアレだよな」
「おい、アレって何だよアレって」
「……」
「……お前んとこは細くて軽いのがいいらしいぞ。ただし自分じゃ外せないやつ」
「そうか……おい、ニヤニヤすんな」
「いやー、俺らのSubたちは可愛いなと思ってな」
「それよりかなりの筒抜け具合だが、この分だと俺たちの言動も全部筒抜けか?」
「……言動に気をつけるか」
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