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「すみません、メロン味二つお願いします!」
「ブルーハワイ食べたいでーす!」
「あの、カラフルミックス味ってなんですか?美味しいですか?」
自称精霊の予言は、見事に当たっていた。八月も半ば、僕は目が回るような忙しさで店の中を走り回っている。焼きそばのメニューを増やしたら、不思議なものでかき氷の売上も延びた。雇った三人のアルバイトに指示を出しつつ、笑顔で接客を続ける僕である。
味の種類は十種類。イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイ、スイカ、宇治金時、ミカン、イチジク、パイナップル、そして独自考案したカラフルミックス味である。
すぐ近くの席に座った小さな女の子が、一口カラフルミックス味を食べて――にっこりと笑顔の花を咲かせた。
「ひんやりー!あまーい!」
「良かったわねー、ミカ」
「うん、お母さんにもあげるー!!」
あのやたらと高級猫で、メスなのに声は老人で、実質中身は変態ジジイだった自称“かき氷”の精霊は、あれから一度も見ていない。
成仏したのか、それともまだ猫に取り憑いて気ままに暮らしているのかどうか。どちらにせよきっと、どこかで満足げに笑っているに違いないだろう。
――どこまで出来るかわかんねーけど、俺続けてみるよ。幸せのかき氷作りってやつ。
どこかで小さく、“頑張れよ孝宏”、という誰かさんの声が聞こえたような――そんな気がした。
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