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「ちょっと、そのAIなんなの!?」驚いたように瑞希が尋ねた。
「瑞希と岩ゴリラ。おめーらも質問はあどにしてけろ。私は今からハードの初期化でPCさ戻っから、清志つれで早ぐ逃げでけろ!」そう言い残してソニアのホログラムが消えてしまった。
瑞希と岩倉が顔を見合わせて、確信めいた表情を浮かべた。
「清志、とにかく今は一緒に逃げて」そう言うと、瑞希が清志の手を取り走り出した。
体育館を横切り、校舎裏のフェンス沿いに進路を取る。
「藤原、オヤジは何で治安部隊に殺されたんだ?」走りながら清志が尋ねた。
「私も清志って呼んでいるんだから、瑞希で良いよ。清志のお父さんはジャンクスの創始者で、私と先生はジャンクスのメンバー」
清志が目を白黒させた。ジャンクスと言うのは、清志の住むS地区にも、あると噂される東海ブロック最大の地下組織で、ランク制社会の崩壊を狙うレジスタンスだった。
「ジャンクスって本当にあったんだ……」清志が一人言のように呟いた。
たった一人の家族である父親の死。
それほど悲しみは感じなかった。
だが、それは悲しくないのではなく、父親が死んだと言う話しに現実味を感じていないだけのことで、その父親がレジスタンスの創始者だったと言われても、現実味が更に遠退くばかりだ。
清志には、全てが他人事のように思えていた。
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