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 しかし治安部隊や警察は、必要に応じて監視カメラ等の映像を確認する。二人が被っている面や、瑞希が上着を替えると言ったのは、その為である。 「清志、そのタブレット初期化して」歩きながら瑞希が言ったが、止まる素振りがない。清志は歩きながら端末を操作して、初期化キーをクリックした。 「このタブレット、車のリモートしかデータ入ってないけど、初期化してどうするの?」 「ここのショッピングモールの地下はリサイクルフロアーだから、リサイクルでコートと交換する」  東海ブロック等の下層ランクの住人の暮らすエリアは、裕福で無いが故にリサイクル文化が発達していた。  大きなショッピングモールには必ず、リサイクル品を集めたリサイクルコーナーがあり、このショッピングモールは、地下フロアー全体がリサイクルフロアーになっていた。  リサイクル文化と言ったのは、リサイクル品の売買が金銭だけには留まらないからである。商品を持っていけば、その店独自のポイントを貰え、同ポイントのリサイクル品と交換も出来る。  一種の物々交換に近いシステムだが、貨幣が廃止にされて産まれたシステムなので、売買にID確認の原則があるものの、レートを変える事でID確認を省く裏道があり、当局は、あえてそれを黙認していた。  人がごった返している場所があった。  大型のモニターの前にベンチが並んでおり、普段は買い物中にちょっとした休憩等をする為の空間だが、今日は特設ステージが設けられていた。  お祭りイベントを盛り上げる為に呼ばれたのだろう。ステージの上では、テレビでたまに見かける芸人がネタを披露していた。
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