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「今から、あの人混みに入るから人混みの中で上着を脱いで」言いながら瑞希が、ステージの天井を見上げて顎をしゃくった。 「あそこにあるのが監視カメラだから、目立たずにやって欲しいんだけど、脱いだ服は小さく丸めて、次に人混みの中でしゃがみながら歩いて、お面を外し、お面と服は床に置き捨てる」  口早に言う瑞希に異論を挟む余地は無い。清志は無言で頷きながらも、憧れていた瑞希と非日常的な行動をしていることに高揚感を感じていた。  瑞希の後に続き、人混みの中で上着を脱ぎ面を外す。人混みを抜けた時に瑞希はレンズが大きなデザインのサングラスをかけていた。  二人ともジーンズにTシャツ姿だった。瑞希は上下共に黒ずくめの服装だったので、右腕の真っ白な義手が異彩を放っていたが、すらりと伸びた脚が、片方が義足であることは判別出来ない。  惚けたように瑞希を見つめる清志に、瑞希が歩きながら尋ねた。 「そんなに私のファッションってダサい?まぁ、確かにこれじゃ色気無いよね」 「全然ダサくなんて無いよ。瑞希って普段はコート脱がないから、なんだか凄い新鮮で」意外に大きな瑞希の胸の膨らみをチラ見してドキドキしたので、動揺を隠すように清志が続けた。 「瑞希は強くてカッコいいけど、普段はあまり人と話さないから、もっと無口って言うか古風なタイプの奴だと思っていた」 「古風って何よ!」吹き出すように笑いながら瑞希が言った。
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