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「な…なんと言うか、物静かで控え目な………女侍なイメージ」古風なんて死語に近い言葉を発した事で、更に動揺していた。
瑞希が頷きながら笑った。
「確かに学校じゃ、そう言うイメージで通している。あそこで素の自分を出したくないもん」
素の自分を出したくない。と言う瑞希の言葉に納得した。今まで清志が持っていた瑞希の古風なイメージが既に崩壊していたからだ。
瑞希の凛としたイメージに揺るぎは無い。しかし、実際に瑞希に接してみると、瑞希は明るく話しやすいタイプの少女だった。
「私にしてみれば、清志の方こそ、やっぱりって言うか驚きなんだけどな」微笑みながら清志を見つめて瑞希が言った。
「どう言うこと?」
「私よりも清志の方が無口だし、清志って学校でいつも一人じゃん。清志は皆と毛色が違うんだよ」
「───」毛色が違うと言われても意味が理解出来ない。無言でいる清志に、瑞希がジーンズの尻ポケットから、銀色の小さなケースを取り出しながら言った。
「マイペースでお人好しっぽい人間に、友達がいなかったら、普通は誰かが友達になろうとするか、イジメのターゲットにされるだけだよ。
でも、清志はマイペースなまま、皆に放置されている。その理由がわかる?」
清志がわからないと返事を返す変わりに、小首を傾げた。
「毛色が違うからだよ。
犬の群れの中に、自分を犬だと思っている狼の子供が紛れ込んで、あくびをしながら犬達を見ているの……私の清志のイメージは、そんな感じだけど、皆も清志が自分達とは違うことを本能的に感じているから、誰も清志をイジラない」
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