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建ち並ぶ巨大集合住宅の群れと、山裾まで広がる農地と工業地帯。
数十年前まで大地の大半を占めていたと言う建造物群は、もう無い。不二山の噴火と地震による津波で全てが消え去った為である。
下層民であるランクC、ランクDの人民の居住区画に指定された、この東海ブロックに個人住宅は存在しなかった。下層民がどんなに働こうが、生活するので目一杯と言うのが現状だからだ。。
海岸沿いの柔らかな海風を感じながら清志が走るのを止めた。学校迄は残り二百メートル程の距離だった。
「ほれ、やれば出来っぺ。間に合ったべ?」清志の肩の上に腰掛けたソニアが得意気に言った。通学中の他の生徒の回りにも、十センチ程の何らかの立体ホログラムが付きまとっている。
妖精、妖怪、猫、犬、パンダや鳥。一種のマスコットのような立体ホログラムだが、AIである立体ホログラムに話し掛けることでAIがそれに応じ、音声や画像で答えると言うのがモバイルPCの主流だった。
「でもさ、学校なんて行っても仕方ないじゃん」
「なして?」不可解と言った様子で尋ね返すソニアに、清志が寝癖で髪の毛の跳ねた後頭部を掻きながら答えた。
「だってわからない事はAIが教えてくれるんだから、勉強する必要なんて無いよ。それに下層民には、どうせ未来なんて無いじゃん」
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