5/14

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
「それって誉めているの?」呆れたように清志が言うと、ソニアが清志の肩に戻りながら答えた。 「清志。今までに何度も言ったが、お前に未来はある!それは私が確約するから、どうせなんて言葉は二度と使うな」  気持ちの良い風だった。寒冷化が進み、冬は全国的に氷点下になるので、三十度まで気温の上昇する短い夏は、暑いと文句を言いながらも清志の一番好きな季節だった。  清志はソニアの言葉に何も返事を返さなかった。今までに何度も聞いた台詞だからだ。 ( NO FUTURE!)  心の中で吐き捨てるように呟き、蝉の鳴き声に耳を傾けた。  蝉の大合唱が滝の水音に似ている。そう思い、ぼんやりと滝を夢想しながら歩いていると、ソニアが警戒するように囁いた。 「清志、気をつけでけろ!」  校門の前で、清志を待ち構えたように、こちらを睨んでいる人物がいた。  体育教師で、トランスヒューマニズム格闘部の顧問である岩倉豪(ゴウ)と、部長の藤原瑞希(ミズキ)だった。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加