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 遠目には銀色の風船が漂っているような光景だが、戦闘や追跡となると、その行動は俊敏で残虐である。  内蔵する小型ミサイルと機銃で対象者を襲ってくるが、対象者の生死のみならず、無関係な周囲の人間の生死も問わない攻撃の為に、東海ブロック内での病気と事故以外の死亡率は、レッドアイの攻撃に巻き込まれたものが、トップから揺らいだことが無かった。  清志に近づくレッドアイの下部が開いて、二十センチ程の小型ミサイルが見えた。 「清志、かわせよ!」ソニアが叫んだ。  あきらかにミサイルの照準は清志に向けられているが、レッドアイに狙われる身に覚えの無い清志は、呆けたようにレッドアイを見つめたまま、動けずにいた。 ( えっ!? )  三メートル程の高さを漂っていたレッドアイの後方に、人影が浮かんだ。  藤原瑞希だった。  瑞希の左足がミサイル発射寸前のレッドアイを後方から蹴り飛ばしていた。  あろうことか、瑞希は空中回転回し蹴りで、三メートルの高さを飛んでいたレッドアイを蹴り落としたのである。  蹴り落とされたレッドアイが、ミサイルごと地面で爆発すると、辺りは大騒ぎとなったが幸い怪我人はいなかった。  騒然とする校門の前で、瑞希が何事も無かったように清志に話し掛けてきた。 「清志。初めて話すのに、いきなりで悪いけど、ちょっと……顔を貸してくれないかな?」  瑞希の声が、感情を押し殺すようにゆっくりと吐き出された。その声は微かに震えていたが、レッドアイを蹴り飛ばした影響ではない。  瑞希に話し掛けられることを、薄々は期待していた清志だが、実際に瑞希に声を掛けられて、瞬時には声が出なかった。  レッドアイに狙われたことと、レッドアイを瑞希が蹴り飛ばしたこと。そして瑞希が清志に話し掛けてきたことにより、清志の緊張がピークに達した為だが、それと同時に瑞希の声の様子がおかしかった。  何で岩倉が居る?  清志は一度も岩倉の授業を受けたことがない。つまり、岩倉とも接点は無かった。  怪訝に思いながらも瑞希の顔を見て息を飲んだ。  瑞希の瞳が潤んでおり、必死に涙を堪えているような表情だった。
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