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 動揺した清志が無言で頷くと、岩倉が「ついて来い」と言って、顎をしゃくった。  二人が清志を連れて来たのは体育館の隅にある用具倉庫だった。 『これは、袋叩き、ヤキ入れ、恐喝等のベタな展開だべ。お前、二人に恨まれるようなごど、なにがしたのが?それに、何でレッドアイがお前ば狙ったんだ?』  清志の目の前の空中にテロップが流れた。ソニアが二人に聞こえるのを防ぐ為に、テロップによるメッセージ表示をしたのだが、勿論、二人の角度からテロップは見えない。  ソニアに言われなくとも、ヤバい展開なのだろうとは思う。だが清志の思考は、何の為に二人が自分をここに連れて来たのか?と言うことよりも、瑞希が泣きそうな表情だったことで一杯で、レッドアイに狙われた理由も、今は後回しで良かった。 「それで俺に何の用ですか?」岩倉の顔を正面から見つめながら清志が尋ねた。本来なら瑞希に話し掛けたい所だが、瑞希の潤んだ瞳が脳裏にこびりついていて、瑞希を直視したくは無かった。 「松山清志。お前とは初めて話すが、俺はお前のことをよく知っている」岩倉が鋭い表情で清志を見つめると、重低音の声で更に続けた。 「お前に悲しい知らせがある。先ずは左手を出せ」  岩倉豪。三十歳、独身。通称、岩ゴリラ。 その通称通りにゴリラに似た風貌のゴツい大男である上に、岩倉の両腕はバトルギミック搭載可能の義手になっており、岩倉はランクBの人間だった。  清志が言われるがままに左手を出すと、常人の倍はありそうな岩倉の大きな左手が清志の手首を掴んだ。 「歯を食いしばれ」 「え!?」返事を返すのと同時に、清志は岩倉の右手に小さな金色のナイフが握られていることに気が付いた。次の瞬間、そのナイフは清志の左手を突き刺していた。  
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