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「雅さんは、元々がランクAの人間だったが、正継さんはランクBからランクAに昇格した人だ。そして二人には、その技術力を買われてランクSへの昇格話しが来ていた。これがどう言う事かわかるか?」  清志には益々もって現実味の無い話しだった。とりわけ、ランクB出身の人間がランクSに昇格なんて聞いたことの無い話しだし、あり得ないことだった。  岩倉が清志の返事を待たずに話しを続けた。 「しかし、二人はその話しを断り、この東海ブロックに逃れてきた。そしてお前が産まれた」 「私はこの足を無くした時の事故で、家族を亡くしたから、ジャンクスの皆が家族みたいなものだけど、正継さんが一番優しかった」瑞希が自分の義足を叩きながら言った。先程、瑞希が必死に涙を堪えていたのは、正継の死を悲しんでのことだった。 「俺も似たようなもんだが、俺にとって雅さんは、姉ちゃんのような存在だった。ジャンクスは正継さんと雅さんが作ったんだぞ」  懐かしそうに言って清志のブレスレットPCを見つめた。 「そのモバイルは正継さんに渡された物か?」 「うん。オヤジが買ってきた、ごく普通の量産型だけど」ブレスレットを見ながら返事を返した。ソニアは消えたままである。 「モバイル自体は何回か機種を変えただろうが、AIはずっと使っている物だろ?」 岩倉の問いに清志が頷いた。 「正規品のAIがIDの摘出を容認するわけは無い。そのAIは、おそらく正継さんのオリジナルだ」意味ありげな視線を清志に向けて、ニヤリと笑った。
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