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「それより、どうして俺がここに居るのが分かったんですか?」
キスの合間に上がる息の中俺は湧き上がる疑問を尋ねた。
「それは俺たちがここで……2年前に運命の出逢いを果たしたからだ」
吐息混じりで翔琉は呟く。
珍しく上気する翔琉の頬を見た俺は、全身を廻る血液がドクドクと大きな音を立て鼓動が速くなるのを感じた。
「ここに颯斗がいるって何の保障もないはずなのに、ここへ来れば絶対に逢えるような気がしたんだ。そして、実際にやっぱりここにいて……それが運命だと思ってしまえる程に俺は颯斗のことが好きなんだ。出逢ってからずっと止められないんだ、この気持ち……。たとえ颯斗から手を離したとしても、また必ず俺から繋ぎ直すから覚悟していてほしい」
俺の空いている方の手を取った翔琉は、自身の胸へとその手を押し当てた。
翔琉の鼓動も速い。
嬉しい。
俺と同じだ。
「ここで颯斗に助けてもらってなかったら、俺……一生こんな幸せな気持ち、知らなかったかもしれないな」
眉を八の字にし、綺麗な顔で微笑む翔琉のその表情は言葉とは裏腹にどこか淋しそうに見えた。
そこには、俺が知らない過去の“龍ヶ崎翔琉”が垣間見えた。
だが、今夜の俺はそんな過去の翔琉の影に怯むこと無く、目の前の翔琉へと抱き着く。
勿論、チョコバナナを浴衣に付けないように注意しながら。
「颯斗?!」
驚きの表情を見せる翔琉。
「……今日だけ特別です。そんなこと言われたら俺だって、ここでの出逢いを意識してなかったけど……もう今日からこの場所が特別な意味を持ってしまうじゃないですか」
程よく鍛え上げられた翔琉の胸板に俺は顔を擦り寄せた。
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