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「……俺だって」 視線そのままに思わず俺もポツリと口を付いて出てしまう。 「じゃあ、俺のモノって証をココ(、、)に付けてみるか?」 翔琉はそう言って自身の鎖骨辺りを指さした。 「え……?」 思いがけない提案に俺は視線を上げる。 「流石に見えるところはNGだが、テレビに映る俺を見た時に服で隠れたあの(、、)場所に自分の付けた証があるって思ったら安心するだろ?」 綺麗に揺れ動くグレーの瞳にそう質されて、俺の心も揺れ動く。 翔琉が俺のモノっていう証……? そもそも、人気俳優である翔琉を平凡な俺が独占していいものなのだろうか? 付き合う特権だとしても、たとえ服で隠されていたとしても、その痕跡を俺が残して良いものなのだろうか? 悩みに悩んだ俺は、顔一つ分上にある翔琉へと視線を向けた。 視線が合った翔琉は、ニッコリと俺へ微笑んだ。 あぁ、やっぱりカッコイイな。 この人は。 どんなに翔琉が俺を好きだと言っても、俺だけが独占しちゃいけない人だ。 世界が認める人気俳優なんだ。 「あの、やっぱり俺もこうして翔琉の傍にいるだけで嬉しいので大丈夫です。今夜は、浴衣を着付けてくれてありがとうございました。今日は手持ち無いのでまた今度支払いますので」 無理矢理作った笑みを浮かべ俺は答えた。 すると、翔琉は強引に俺の顎を掴んだ。 「それは本心か?浴衣の支払いなんてどうでもいい。俺が好きで見繕ったんだから。何度も言うが、俺は颯斗のことが好きだし、俺の全ては颯斗のものだと思ってる。遠慮なんてするな。俺は颯斗のワガママを聞きたいし、悩み事なら一緒に解決していきたいんだ」 そう言いきって、翔琉は全身に火花が散る程の濃厚な口付けを俺にしたのだった。 あぁ、俺はこの人に探してもらえて この人に好きなってもらえて 本当に幸せだ。 まだまだ蝉が元気に鳴く中、少しだけ秋の風を感じ始めた夏の終わりの夜。 定番の夏の思い出は作れていなかったが、俺は翔琉の愛を再確認し酷く安心したのであった――。 END
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