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チョコバナナの甘い香りを嗅ぎながら、俺は特にそれに口を付けること無く手に持ったまま2人で来た道を独りゆっくりと足取りを辿るように戻っていた。 楽しそうにこれから祭りへ向かう人たちとすれ違う度に、夏の終わりを告げる夜風と共に全身が酷い寂寥感に駆られていく。 翔琉は、「この仕事を続ける以上、一般的な“お付き合い”はしてやれない」って。 そう少し前にはっきりと言われたばかりじゃないか。 しっかりしろよ、俺。 最初から芸能人と“付き合う”ってそういうことだって分かってたじゃん。 今更、何をへこんでるんだよ。 否、違う。 翔琉の隣りに俺は確実にいた。 だが、世間から見たら俺は翔琉のツレとすら認識されていなかったんだ。 俺はその事実に酷くショックを受けているんだ。 改めて、平凡な大学生である俺と超人気俳優の翔琉とでは釣り合うどころか、隣りに並ぶ資格すら無いという現実を突き付けられた様な気がして、胸がツキリと痛み自然と目頭まで熱くなってくるのが分かった。
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