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気が付けば、カフェ近くにある俺が2年前に翔琉を助けた例の総合運動公園へと辿り着いていた。
すぐ側で賑やかな祭りが行われているというのに、相変わらず人気は少ない。
ここへ来たのは、本当に無意識だった。
……あぁ、ここで俺は翔琉を助けたんだっけ。
芸能人だなんて全然知らなくて。
「颯斗!!」
不意に名前を呼ばれ振り返ると、そこには息せききった翔琉が立っていた。
「……翔琉」
「何で……何で俺の手を離したんだよ?!」
いなくなった俺を必死になってこの短時間で探してくれたのだろうか。
綺麗にセットされていたはずの前髪が乱れていた。
「淋しいだろ。一緒に列に並んでいたのに、気が付けばいなくなるなんて!」
まだ翔琉は肩で大きく呼吸している。
……翔琉、それは違うよ。
俺が離したくて手を離したんじゃない。
そう言い返したかったが、全て言い訳にしか聞こえない為沈黙を続ける。
その瞬間、翔琉は俺の頬を伝う熱いものを舌で丁寧に舐めとった。
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