【警官】

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【警官】

 ある所にそれはそれはとてもとても正義感の強い青年警官がいました。  この世の中から悪を一切排除し、正義と秩序を重んじる、崇高な考えを持って、全ての犯罪の廃絶の一念を胸に、彼は警官になりました。  ところがある天才啓蒙者の著した『あなたもこれで人生間違わない、正しい道徳と倫理と正義と善行の持ち方』という精神健全を普及する啓蒙本が世界的ベストセラーとなり、悪さをする人間が改心して犯罪者などいなくなってしまいました。  それは正義感の強い青年警官の望んだ世の中でした。  しかし、そうなったら誰も悪事をしなくなっため、世界中の全ての警官が廃業になり、世界は失業者だらけになりました。  すると警察を辞めさせられた元の警官たちは徒党を組み、大暴動を各地で起こし始めました。警察は世界最大の組織であり団体です。そのデモっぷりは過剰にエスカレートしていき、時に略奪行為や暴行は勿論のこと、幾多の殺人も引き起こしていました。  誰もが善人になれる奇跡の名著、『あなたもこれで人生間違わない、正しい道徳と倫理と正義と善行の持ち方』は暴虐惨殺独立愚連隊と化したクビ切られ警官たちによって焚書扱いになり、もはや読まれる事は廃れ、獄悪人復興運動に勤しむ始末のオールド・ポリスメンたち。自分たちが一番の大姦の群れである事も忘れて。  無論、かつて正義感の強かった青年警官も、拳銃片手にチョッパー型のバイクにまたがって、面白半分に撃ちまくっては、老若男女の死屍累々たる有り様を築いていきました。                            了
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