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 「蒼佑、大丈夫か?」 そう言って先輩刑事の桑原さんは背後から俺の髪をくしゃくしゃにしながら、まるで小さな子供にするかのように頭を撫でた。 「・・・・・はい、大丈夫・・・です」 「そうか・・・・お前、いい刑事になるよ」 そう言って、桑原さんは再び現場へと戻っていった。  10年前、誰がこんな未来を想像しただろう。刑事になった俺が、好きだった女の子を逮捕するなんて。  あいつは、愛し方を間違えた。そんなあいつを、それでも嫌いになれない俺は、刑事失格だろうか・・・。  10年前の卒業式の後、俺は勇気が出なくてあいつに告ることができなかった。どうしても考えてしまう。もしも・・・もしも、俺があの時もう少し勇気を出せていたら・・・・。  あいつに、違う未来をあげられたんじゃないかと・・・・・。 いや、ばかげてる。ただの俺の願望にすぎない。 スーツの袖口で涙を拭いて先輩たちのいる現場へと向かうと先輩たちに向かって言った。 「容疑者米倉美月、署へ護送しました」
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