ほどよい温度

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「ならば、その場でじっとしておれ。うっとおしい。」 「ひと所に留まっていると、接地面がすぐに(ぬる)くなってきちゃうじゃん。だからこうやってさ……。」 再びフローリングを転がり始めた僕に、彼女はテーブルの上のリモコンを投げつけようとしていたので、慌てて立ち上がった。台所まで移動し、冷蔵庫の中からお茶のペットボトルを取り出して飲む。 「あー、生き返るー。」 冷蔵庫に頭を突っ込んで、超涼しい、冷蔵庫の中で暮らしたいなどど言っていると、中の食材がダメになるから閉めろと(たしな)められた。 「大家さんがクーラーの修理頼んだけど、来てくれるの三日後だって。」 僕は悲嘆に暮れてそう言ったのだが、 「三日くらい我慢しろ。」 彼女はバッサリである。 「えー、しんどいよ。雪ちゃんはいいよね。暑さ、感じないんでしょ?」 「まあ、雪女だからな。」 そう。彼女は雪女なのだが、ワケあって半年前からこの家に住んでいる。そのワケというのはーー
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