ほどよい温度

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そんなワケで、雪菜がこの家で暮らし始めて半年。秘密はまだ守られている。 「暑い。もうダメだ。体が溶けるう。」 「大丈夫だ、孝太郎。人体は溶けたりせぬ。」 雪菜は涼しげな顔で雑誌をめくっている。もう少しこっちを見て欲しくて、僕は大胆な質問をしてみた。 「ねえ、雪ちゃん。前に東京に来たいから僕を助けたって言ってたけど、理由は本当にそれだけだったの?」 「何が言いたい?」 「その、実は僕に惚れちゃった、とかさ?」 「……溶けてはいないが、頭が沸いているようだな。」 冷たい視線が突き刺さる。僕は冗談だよと言って笑ってみせた。

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