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僕の身体の皮はまだ薄く冷たさが皮膚を通して身体に伝わる。
自分の目で見て、耳で聞いて、鼻で嗅いで、口で味わって、手足で触ったものが頼りだ。
真っ暗な闇の中に僕の吐いた息がボウっと白く浮かんでは消える。
冬の匂いがする。
誰も行ったことのない道でもないところを行く。
だから一歩一歩が凄く大変だ。
細い細い狭い道だ。
僕の身体には木や草や石や枯れ葉や砂や土やらが覆い被さる。
なんだかわからない生き物が僕の柔らかい皮膚に噛み付き血肉を食らう。
振り返ると僕の歩いた道すらないんだ。
おばあちゃんが言っていた、
「 死ぬ時がわかったら誰も来ないところに行って事切れるんだ。」
と。
おそらく僕の行く先は事切れる場所なんだろうけども僕は、この命を燃やしてみたいと思っていたんだ。
僕は自分だけで世界にいるような、この宇宙に自分がさまよっているように感じた事を今でもはっきりと覚えている。
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