オレが、オレの人ごみの中で監禁?

1/1
前へ
/4ページ
次へ

オレが、オレの人ごみの中で監禁?

「オレに似た男」は、それが耳に入らないのか。 そのままドカッとオレの右隣に腰を下ろした。  ぷしゅー  ドアが締まった。 「あの、すんません。あなたは、どなた様……」  ぷしゅー 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「ま、またかよ!」  二人目の「オレに似た男」が、入ってきて、オレの左隣に座った。 「ど、どうなってんだ!? オレは、悪い夢でも見ているのか?」  ところが、これで終わりではなかった。 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」  次から次へと、オレに似た男、いや、オレそのものが入ってきて、たちまち車内は「オレ」で一杯になった。 「ちょ、どどど、どうなってんだ、これは!?」  ドアが、開いては締まり、締まっては開くを繰り返し、そのたびに「オレ」が入って来た。 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」 「んだよ、最初からそうしろよ、ボケ」    その数は無限に、そしてどんどんどんどん増えていき、車内はギュウギュウ詰めになり、ほぼ身動きが取れないほどになった。  オレは、オレが作り上げた人ごみの中で、監禁状態となった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加