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プロローグ
カチ、カチ、カチ。
時がゆっくり、刻まれている。
ガチ、ガチ、ガチ。
音を立てて、歯が鳴っている。
圧倒的な悪意が、俺を蝕んでいる。圧し潰さんばかりに、俺に圧し掛かっている。
それはものの例えではなく、現実に。四方の壁は、メリメリと叫び声を上げながら、俺に迫って来ている。あとどれくらい、耐えられるのか。この悪意が尽きるのが先か、それとも俺が、見事にぺしゃんこになっちまうのが先なのか。
こんなことになる前に、何か出来たはずだ。少なくとも、いくらかマシな展開にはなっていても良かった。しかしもう、全ては今さらのことである。この、俺を覆いつくす悪意は、こうして現実に、ここにあるのだ。
どこでどう、間違ってしまったのか。今さら思い返しても、無駄なことだとは思いつつ……。
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