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自称、地縛霊
不思議なことに、目の前にあるはずの本堂が、いくら進んでも近づかない。
「あの、もし」
誰もいないはずの境内で、二人に話しかける者がいた。
「だ、誰だっ!」
「え、私はただの地縛霊です。この試練に失敗して、命を落としたのです
安博が見ると、それはボロボロの空手着を着た男だった。
「あはははは! どこの世界に地縛霊って名乗る幽霊がいるのよ! 超ウケるんだけど」
典代が爆笑すると、安博はカタカタと足を鳴らした。
「い、いや、待て。この男、左手がない!」
「ええ。私たちは、欲に眼がくらんでこの試練に挑みました。しかし、手を離してしまったために、腕を切り落とされ、挙げ句に命まで奪われたのです」
二人は呆然と、自称地縛霊を見つめていた。
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