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ただの肝試し?
試練の当日。
スタートは、午後8時だという。
「てか、ほぼ肝試しってだけじゃね?」
安博と典代は、懐古寺という小高い山の麓にある古刹の古びた門をくぐった。既に日は落ち、寺全体が 赤黒く染まった。
「東京からたった30分なのに、こんなお寺があるのね」
「お待ちしておりました。本日の挑戦者は、あなた方お二人です。掟は単純。この目の前の参道を通り、本堂を通り、奥の院にある宝玉を取って来ていただきたい」
真っ黒な法衣に身を包んだ丸坊主の男が告げた。
「は。なんだ、簡単じゃねえか。気味が悪いから、みんなやらねぇだけだろ」
安博は、せせら笑った。典代は、住職に質問を浴びせた。
「あの。参道には、何があるんですか?」
「それは……。試練前ですので、詳細は差し控えますが、強いて言えば『人ごみ』があります」
典代は思わず吹き出した。
「ぷ。なに、それ。余裕じゃん。安博、1000万、いただきね!」
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