BAR「かげろう」奇談

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 東京は四谷の西に、少しさびれた「よつや商店街」がある……  さびれた……とはいえ、日中の人通りは、そこそこあった。  その奥に、夜歩聞(やぶもん)という奇妙な町名の一角があった。  夜中になり、月が雲に隠れると出合えるような町だった。  その奥の、ボロい橋の近くに、よく見ないと分からないような……  『かげろう』というBARがあった。  店内は薄暗く、殺風景で、流れている曲はよく分からないブルース。  普通の客なら、まず入らないだろう……そんな不気味さがあった。  壁の絵画も、ムンクの「叫び」のアレンジが数点、飾ってあり……  それが不気味さを、増しているように思えた。  カウンターの他には、テーブル席が四カ所しかないという、早い話が狭い店だった。  そのカウンターには、ヒゲ(つら)の初老のマスターが1人いるだけだった。
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