BAR「かげろう」奇談

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 すると男は、口元だけで笑いながら、 「今の話……マスター聞いたし……オレの顔も見たよね」 「はい?」 「ちょっとマズイから……」  男は、そのグラスをカウンターの端で、パリーンと割ると、カウンターの中へ入り、マスターに迫りながら、 「悪いけど……死んでもらうよ」 「その御注文は、お受けできません」  マスターは、ブルーのカクテルを飲み干すと、そのグラスを、近くの灰皿でパリン! と割った。  その瞬間、男が立っていた足元に穴が出来、男は、 「うわー! 何故だー!」  落ちていった。  男が、ハッと気付くと、ボロ橋に倒れていた。  ふと見ると、雨は上がっていたが、月は見えなかった。  向こうから何人もの男達が楽しそうに向かって来ていた。  その道は行き止まりだったので、男は立ち上がると、その人ごみを抜けるしかなかった。  男が人ごみの中程に来た時、不意のショックで、また気絶してしまった。  次に男が目を開けると、狭くて暗い箱の中に入れられていて、ビクッともしなかった。  そこは、墓地の地中に埋められた棺桶(ひつぎ)の中だったのだ。  ――終――
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