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大陸北方に軍事大国があった。その国の王は伝説の剣を所持しており、それを使い民に圧制を敷いてきた。
王には一人娘がおり、その姫様も幼い頃から武術を王や兵士から学び実力は血筋の才かとんでもないものになり、その姿を王や周囲は喜び寵愛されていた。
南にも大国があり、その国の王は伝説の盾を所持していた。
それを知った北の王は、南の国に攻め入った。が、代々慈愛の心で国を治めていた南の国は一丸となり兵の数の差で北の軍隊を撃破し、そのまま北の国へ反攻した。北の王が負けたのを民が知ると、圧政に苦しめらていた民はあちこちで反乱が起こし南の国への味方となり、一気に北の国は制圧され北の王は倒された。
北の姫は王の信頼の置ける従者に連れ出され何とか逃げ延びた。途中、陥落する城が見え、南の国への復讐を胸に誓った。
姫は、従者の娘という事になり、南の国の首都にある従者の親戚の家へ一緒に行くことになった。娘は復讐を想いながら鍛錬をしているうちに、1年が過ぎた。娘は首都で住んでいるうちに、町の人々の顔が明るいことに気がついた。南の王は民のことを想い治めていると聞いて、前は馬鹿にしていたものの、確かに北の国の民と顔を比べると違うことに気づき、復讐は正しいのだろうかと少しずつ気持ちが薄れていた。そんなとき従者が町である募集をしているのを見つけてきた。
お城でのメイドを募集しているというのである。従者は、私が経験を生かし、城に仕えて復讐の機会をうかがうと言う。しかし娘はそれなら私も一緒に仕えると言い、従者の反対を押し切り一緒に仕えることにした。だが娘は武術しか知らないようなものなので、なれない家事仕事で失敗が多かったが、仲間のメイドも優しく教えてくれたので苦にならなかった、仕事を覚えていく内に数年が経ち、王様の食事の席の場にも付くようになった。しかし、警護が厳しく機会はうかがいつつも、復讐する気持ちは薄れていた。
そんなある日、いつものように他のメイドと調理場で食事の用意をしていると王子が現れた。王子は娘より少し年下だったが、王のように慈愛に満ちた笑顔でニコニコしていたので、娘とメイド達も笑顔で挨拶した。そのとき、ドーンと音がし、城の中が急に騒がしくなった。魔物が襲来したのである。
魔物は一気に城の中へ攻め込んできた。近辺では見ないような強力な魔物ばかりで兵士たちは倒されていった。メイド達と王子は、鍋のふたを盾代わりに持ち、脱出を図っていた。しかし、どこにも魔物がおり、逃げ道はなくなっていた。その内に魔物に気づかれ、娘達へ襲い掛かってきた。とっさに娘は近くにあった兵士の死体から剣を取り、鍋のふたで攻撃を防ぎ、魔物を斬り倒した。そのとき、「王子!」と声がした。振り返ると王子がいなかった。聞くと王子は玉座の間へ向かったと、ちょうど娘の従者が生き残っていた兵士達と来たのでメイド達を任せ、従者が止めるのを振り切り娘は玉座の間へと向かった。
玉座の間についたが王は戦死していた。王子はその遺体に寄り添い泣いていた、敵がまだいるか周囲を確認するといつも玉座の後ろに合った伝説の剣と盾はなくなっていた。
娘は縋り付いて離れようとしない泣く王子を無理矢理はがして、抱えながら魔物を倒しつつ城を脱出した。
首都から離れたところに、王子や首都の避難民は村を作り、住むことになった。ある日、夜に王子に呼び出された。王子は、僕に武術を教えてほしいと、真剣な眼差しで言った。娘は「私でよろしいのですか?」と聞いた。「もちろん。」と、王子は答えると、娘は生い立ちと復讐を考えていたことを告げた。王子は驚いていたが、「その気がまだあるならあの時復讐していただろうし、それをせず脱出を助けてくれた。そして姫の戦い方が兵士よりも強く美しくその姿に惚れてしまった。」と言い、最後の言葉にはっ、と王子は気づき顔を真っ赤にしながら、頭を下げた。
美しい、惚れたと言われた姫も顔を真っ赤にしていたが、「分かりました、こちらこそよろしくお願いします。」と、答えた。
それから数年が立ち、王子は立派な青年になり、皆に告げた。
「奪われた伝説の剣と盾を取り戻し、国を復興するために旅を出る。」皆は反対したが王子に押し切られた。
そして出発の日、王子は皆に見送られて旅立ったが姫はいなかった。村が見えなくなった所に、髪を斬り、道中差別されないよう男装の格好をした姫がいた。「初恋の人には待っててもらいたかったけど、敵わないからな」と、王子は笑いながら呟き一緒に復讐の旅へと行くことにしたのであった。
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