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重なる時間
僕はその腕時計を買い取ると、もと来た道を戻った。ずっとこの時計を探していたのだろうか。自問自答するが、分からない。ただ、忘れていた記憶を取り戻した僕は、心が少し前向きになった。
先方の人混みの中、彼女を見つけた。今度は真っ直ぐに確実に彼女へ向かって進む。さっきの腕時計を手渡すと、彼女は一瞬驚いたが、すぐにあの時と同じ弾けるような笑顔を見せた。
腕時計は12時を指していた。
長針と短針が重なる時間。
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