1章 常闇への光 第1話 新しい季節と変わらない日常

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とりあえず、いろんな部活を見て回ったが、運動部は俺に似合わないし、運動神経最悪だしだからやめておこう。音楽系もやる気はないし、となると、文芸部とか華道部とかの文化部…。うん、どれもあまりやる気が出ないな…。そんなことを考えながらいつもの場所についた。 「はぁ…着いてしまったか。クラブセガ川崎。」 クラブセガ川崎、川崎市にあるゲームセンターで俺のホームグラウンド。いつもここで音ゲーをキャプチャしては動画サイトに投稿している。さてと、今日も100円を入れて、ゲームスタート! 「累計1000日ログインボーナス!スーパーチケットセット1組をプレゼントBOXに送りました!」 おっ、ラッキー。今日で俺もこの『MUSIC LANE』を始めて1000日か…長い月日がたったもんだ。 「新学期!おみくじキャンペーン!今日のあなたの運勢は~!?」 あぁ、そういえばメンバーズサイトでもそんなログインキャンペーンをやるとか言ってたっけ。いいものが出るに越したことはないけど、期待はしないでおくか。そう思いながら回るガラガラをボーッと気を抜いて見つめていた。 「おめでとう!大吉!次に声をかけてくれた人が、高校生活を左右する運命の人かも!」 そうメッセージを表示しながら、大吉の景品、エクストラグルーヴチケット3枚を受け取った。景品の豪華さからして、大吉はあまり出ないのか?そう思いながら、1曲目の選択画面に移っていった。MUSIC LANEはいわゆる音ゲーって感じのレーンから流れてくるノーツをタップしたり、フリックしたりする音ゲーなのだが、一番の重要ポイントが、手で操作するのは正面の最大16レーンに加えて、左右それぞれに2レーンずつの4レーン。さらに、足元にもフットペダルというドラムのバスドラみたいな感じで、足で踏んで操作するペダルのあるレーンの計21レーンとかなり多い。正面のレーンに流れてくるノーツはまだノーツの大きさによって判定が広がるのでマシと言ったところか。 「3曲目を選んでね!」 このゲームにもレーティングシステムはあり、今の俺のレーティングは15.32で、メンバーズサイトで確認したが、今日の時点でプレイヤー全体の上位300位程度らしい。全く、サブチャンとはいえこのゲームの動画を投稿してるやつより上のやつらは全員廃人だろ。そう思いながら、3曲目、ついこの間新しく実装されたボカロジャンルの「命に嫌われている」を選択した。 「3rd Groove Start!」 そう表示されて聞き覚えのある前奏とともにノーツが流れ始めた。最高難易度MASTERの難易度が13+ってことを考えるとこんな優しいもんじゃないだろ。そう思いながら流れるノーツたちをさばいていってサビが終わった。 「幸福も 別れも 愛情も 友情も」 おっ、ここの部分あるのか。俺はなんだかんだでここの部分とラスサビの緩急が好きなんだよなぁ…。 「そういうことが歌いたい」 来るぞ…!ラスサビ! 「命に嫌われている」 ちょっと待て!最初のサビで空いてた隙間全部16分音符で埋めてきやがった!?おいおいおいおいノーツが多い!多いって!! 「殺して あがいて 笑って 抱えて」 16分で正面のノーツをさばきながら2拍目と4拍目の頭が側面レーンだと!? 「生きて 生きて 生きて 生きて」 利き手の右手入りにしてしまったから左の側面レーンが叩きにくいっての! 「生きろ」 うわっ、側面レーン4つとも同時押しは聞いてねぇって!左下レーンがスカッたじゃねーか! 「SUCCESS!」 何がSUCCESSだよ。こっちは初見フルコン逃してんだよ。そう思いながら、筐体のボタンでリザルト画面のMISS1と表示された画面のスクリーンショットを撮る。このスクリーンショットをメンバーズサイトからダウンロードして、Twitterにでも拡散するか。 「ちっ!イライラするなぁ!」 そう言いながら、もう100円入れたところで 「ちょっと待てよ君!連コはダメだろ!」 しまった。後ろに人が並んでたのか。そう思って振り返る。 「全く、100円やるから俺と番変われ。」 そう言って俺と同じくらい身長のある黒髪の一見こう言う所には来ない真面目そうな見た目の高校生の人に100円を渡されて、番を変わらされた。 「ほら、キャプチャ。お前のだろ?」 「あっ、はい。」 制服からして、耀木の人ではないな。身長は俺と同じくらいだから175cm近辺か。そう思いながら、キャプチャを受け取った。  このとき、俺はおみくじの内容を思い出した。この人が俺の学生生活を?いや、同じ高校でもないのに俺の学生生活が変わるわけもないだろう。そう思いながら、俺は帰っていった。
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