<第三話・絵画>

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「この絵が発見されたのは、ある資産家の家でな。ガイア人は体質上、基本的に異星への渡航が禁止されておる。我々は皆、異星人だろうと第三者の体液を貰うだけで妊娠してしまうが……その上、ガイアの民にとって異星人の遺伝子情報は猛毒になりうると知られているからな。しかも、ガイアの遺伝子は劣性。ガイア人と異星人で婚姻した場合、ガイアの民の特徴を僅かしか継がぬ子供が産まれることが多いこともわかっている。ゆえに、我々は異星人と交流することは許されていないし……その子供を作るなど最大の禁忌とされとるわけだ」  それは、アンディも知っている話だ。なんでも、ガイア人のように人の遺伝子情報を接種するだけで子供が作れる種族は、宇宙広しと言えど非常に稀なものであるらしい。  ガイア人が異星人と仮に恋人のような関係になった場合、多くのケースでガイア人の方が母親になるしかないわけだが(男性器も精子もないのだからしかたない) 、それは非常に大きなリスクを伴う。適切な処置をしなければ、遺伝子毒にやられて母親となったガイア人は死亡することになる。  反面、ガイアの血を僅かでも継いだ子供は魔法が使えるし、母親の知識もある程度継げる。見目も良く、丈夫な体であることが多い。それらの理由から、一部の暴力的な異星人はガイアの民を誘拐して子供を産む道具にする、なんて恐ろしいことをしてきたケースもあるのだという。  それらの理由から、ガイアの民は長年他の惑星との交易を最低限に留めてきたという事情がある。よその惑星と貿易しなくても、自分達だけで食料を十分に自給できる環境があるからというのも大きな理由ではあるが。なんといってもガイアの惑星は、水も緑も豊富なことで有名なのだ。 「だが、この絵を見ればわかるように……この描かれた女性は、どう見てもガイア人ではない。恐らく地球と呼ばれる星の人間だろうと推測されている」 「地球?」 「大昔のガイアのような惑星であるらしい。水や緑は豊富だが争いは多く、そして今の我々がこのような進化をする前のように……男性と女性の体がもっとはっきりと分かれているのだそうだ。男性は子供を産めないし、女性は子供を産ませられないのだという。まあ、宇宙の常識としてはそちらの方が普通のことであるらしいがな」 「へえ……」  つまり、その資産家とやらは許可を得ずに勝手によその星に渡った、あるいはよその星の人間がこちらに来ていたのを隠していた可能性があったということか。
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