<第五話・性差>

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 実際、色々やらかしたアンディも“人に自分の唾液を飲ませる”か“血液を注射する”というやり方で相手を妊娠させるやり方を選んできている。麻酔もなしに腹の底を開かれる、なんて――ぞくぞくする行為だが、さすがにアンディもそこまでリスクの高いやり方を強いることはできなかったのだ。  いや、その苦痛を浴びた人間の絶叫というヤツは、一度聞いてみたいところではあったけれども。 「で、両方妊娠して……まあ俺達は自分の意思で妊娠期間を変えられるからさ。子供が産まれる時期はズラせるし、同時に妊娠しても産まれる子供の年がズレるってのもおかしなことじゃないわけなんだけど。そうなると、当然両方が父親で母親だから、子育てはどっちもするし、どっちも働くことを考えないといけなくんだよな。俺達が男女で差別をする、ってことをそうそう考えないってのはそれが一番大きな理由なんだろうさ」  もっと言えば、地球人は自分達よりも男女で身体能力に差があるものらしい。ガイアの民にも無いわけではないが、それでも聞いた感じだと腕力体力共に地球人と比べれば男女の能力は微差というところがあるだろう。下手な男性より大柄で屈強な女性も珍しいものではないから尚更だ。  最終的には、本当に男女で見た目も変わらなくなる日が来るのかもしれないと思う。今両者を明確に隔てるものがあるとすれば、それこそ“はっきりとした乳房があるかどうか”とか“声の質の差”くらいなものである。しかし、ガイアの民は魔力を赤子に供給することで赤子を育てるので、授乳するということを現在殆どしていないはずである。そもそも、男性が母親になっているケースもあるのだから、授乳そのものが極めて困難なことも少なくない。  身も蓋もない言い方をすれば、女性のふくよかな胸というのがもはや無用の長物となっているところもあるのだ。個人的にはあれほど美しい芸術もないと思っているので、それがなくなってしまっては淋しいとアンディは感じるわけだが――まあそれはそれ、人間の進化の流れがそう判断したのならば仕方のないところではあるだろう。 「俺らガイア人が言うのも説得力ないかもしんないけどさ。地球人は俺らと違って、男性は子供を産まないし子供を産めるのは女性だけなんだろ?でもって、女性は基本的に男性より体格も腕力も体力もないときてる。なら、ある程度役目に差が出るのは仕方のないことなんじゃないかと思うけどねえ」 「そういうものかしら」 「そうだよ。男女平等は、男女で本当に平等に仕事ができるケースに適用されるべきじゃねえのかな。それこそ、体力仕事が多い現場で、女性は“体力がないから”っていう理由で肉体労働を減らして貰っていたりするとするだろ?それで同じ給料貰うのはちょっとおかしくねーかなあと俺は思うわけ。逆に、それで女性の方の給料がちょっと少なくても、不満を言うのはお門違いじゃないかと感じるわけだよ。だって、実際男性より配慮してもらってるわけなんだからさ」
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