<第五話・性差>

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<第五話・性差>

 それから、アンディの仕事は朝起きて朝食を取ると出勤し、地下へと降りてフロウメリーのいる部屋に入り彼女と会話する――そのローテーションで固定されることになった。週五日、ただ彼女と話して時折遊び相手になり、部屋でのんびりすごして報告書だけ上げればいい簡単な仕事である。  就業中は基本部屋で過ごすようにとは言われているが、かといって申請を出せば通らないというほどでもない。長時間部屋を開けなければ、そして部屋の鍵を開けたままでなければ特にお咎めを受けるということもなかった。何より、次第にアンディ自身、部屋で過ごす時間が全く苦痛でなかったからというのもある。  フロウメリーは非常に上品で、話し上手であり、同時に聞き上手であった。彼女はやはり己が“地球人”であるという認識と知識があるらしく、地球とガイアの民の文化や性質の違いというのは非常に興味深いところだった。  やはり教授が言っていた通り、地球人の男性は子供を産むということがないらしい。また、自分達と違って男女の性差がもっと大きなものとして扱われているようだった。 「わたくしは自分が産まれた頃の時代と、わたくしを作った人の知識でしかものを知らないわけだけど。私達の星では、男性と女性で就く職業や役目が違うなんてことも少なくありませんでしたわね。わたくしが産まれた時代ではだいぶその性差というものの認識は少なくなってきたけれど、それでも子供を産むのは女性しかできないから……やはり子育ては女性がやるもの、みたいなところはまだあった気がするわ」 「あーそれは大前提として、俺達とは違うんだろうなあ。俺らは子供を産むのは男女で固定じゃないし、より優秀な能力を持っていると認められた方ってことが多いし。ていうか、夫婦両方が同時に子供を産むってこともあるから、役目の固定ってのが実質不可能なんだよなあ」 「あら、そうなのです?」 「そうそう遺伝子交換ってのは、実際“交換”なわけだから、どちらも受け取り手送り手が兼業できるんだよなあ」  そう、ガイアの惑星の民は、何よりも生殖能力という意味で進化した種族だとも言われているのだ。それは、異星人と比べて遺伝子が劣性であることを補うために産まれた能力でもあるのだろう。 「地球人はその……セックス?ってのをしないと基本的に子供は生まれないんだろ?でも俺達は違う。それこそキスだって子供を作るのには十分だ。で、唾液を交換すれば、両方にお互いの遺伝子情報が入るだろ?だから両方が妊娠する可能性が高いってわけだな」  ちなみに、ガイアの民であっても実は――子宮に直接体液を入れた方が確率が高い、という結果は出ているらしいが。さすがにそれは羞恥心も伴うし、そもそも当然の常識として子供を産む時でなければ子宮口というものは殆ど開かない。麻酔でもしなけれが痛いだけで成果が産まれることもまずない。ゆえに、データではそう出ていても、多くの者がキスか注射、あるいは相手の血液を飲むなどのやり方で遺伝子交換を行うのが一般的なのであった。
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