ひんやり

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明里(あかり)は学校に忘れ物をし、放課後、それを取りに行った。 明里の通う小学校は、この辺りでは古い方の校舎で、正門の近くに二宮金次郎の銅像がいる。 夕方の教室はしんとしていて、薄暗かった。自分の机の中に探した教科書を見つけ、それを取って教室を出ようとすると、白い女の霊がこちらに近付いて来た。明里は怖かった。とにかく壁際まで逃げると、黒板に手をついた。近寄る白い影が怖くなって、思わず黒板に爪を立ててひっかいた。 ぎゃあ。と明里より大きな悲鳴を上げて、女の霊は消えて行った。 明里は、もう一度黒板を引っ掻いた。幽霊の時よりぞわっとして、鳥肌がたった。 黒板のあの音以上に怖いものが無くなった明里は、薄暗い廊下を歩いて家まで帰った。
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