3.親友

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3.親友

美「………………」 瑠「…み、美恵?大丈夫…?何かあった…?」 美「………瑠衣〜〜〜っ!!」 ───·····ガバァッ!! 瑠「へっ!?ちょっ、美恵!?」 朝、教室で会った瑠衣に涙目のデブが抱き着いているこの状況。 真夏で暑苦しいのに、さらに暑苦しい光景を目にしている諸君。 すまないが、文句は"アイツ"に言ってくれ。 (それもこれも全部………っ!!) ───昨日の放課後。 鈴『条件は、俺と付き合うことだ』 美『………………は?』 何言ってんの、コイツ。 真夏のこの暑さでおかしくなった? いや、元々おかしいヤツだけどさ。 美『……いや、普通に笑えないんだけど』 鈴『はぁ?嬉しいだろ?女子に大人気の俺と 付き合えるんだぞ。もっと喜べよ』 美『いやいやいや、有り得ないから』 (私がコイツと付き合う? つまり恋人同士になるってこと? いや、いやいやいや…ほんと無理!!) 鈴『どうせ、今まで彼氏なんていたことない んだろ?初めての彼氏になってやるよ』 美『ほんっとに大きなお世話だから! 誰がアンタなんかと付き合うか!』 鈴『はぁ?何が不服なんだよ』 頭上から苛立ちのこもった声。 少しだけ締まる逞しい腕。 体に食い込んでくる感覚が頭を麻痺させる。 (……しっかりしなさい、美恵!! コイツは"あの原因"の張本人だぞ!!) 私は鈴谷 昴の足を思いっきり踏みつけた。 鈴『い"っっ!!?』 反射的に離れる腕と体。 やっと開放された私の体は少し汗ばんでいた。 足を庇うように目の前でしゃがみこむ。 鈴『…なっ、何すんだよお前…っ!!』 美『こんなデブにだってね、プライドくらい あるのよ!! 誰が好き好んで大っ嫌いなアンタと付き 合うかっての!!』 フンっと鼻を鳴らして、私は家に急いで帰った。 瑠「……………す、すごいね、それ……」 美「あ〜……今日ほんと来たくなかった…」 若干引き気味の瑠衣の表情。 これが普通の反応ですよ、わかる? あの男に群がる女子にこんなこと言ったら逆恨みされるだろうけど。 美「…まぁ、一応回避出来たし。昨日のこと は忘れるようにする」 瑠「あれだけニコニコといい顔してる王子様 系男子がそんなことをねぇ……。 …というか美恵、なんでそんなに鈴谷君 を毛嫌いしてるの?」 ───ギクッ…… まぁ、これだけ毛嫌いしてればそう思うのも不自然だよね。 本当のことを言っても、瑠衣は私の味方をしてくれるって信じてるし。 私は、目の前に座る瑠衣の目をじっと見つめた。 美「……瑠衣。瑠衣には、私がどうしてアイ ツのことをここまで嫌うのか…教えてあ げるね」 瑠「…え、いいの?言うの嫌じゃない?」 美「うん。瑠衣はいつでも私の味方だって信 じてるから」 ぱぁっと大きな目が見開いたあと、瑠衣は「当たり前じゃん!」と言ってくれた。 1つ小さな深呼吸をした私は、あの日のことを少しずつ話し始めた。 美「……………と、まぁ…そんな事があって…」 瑠「……………」 美「…瑠衣? …ごめん、嫌な気分になったよね」 瑠「……………せない」 美「え?何?聞こえなかった……」 わなわなと体を震わせた瑠衣は、俯いていた顔をバッ!と上げた。 その顔は怒りと悲しみが混ざったような顔をしていて。 瑠「許せなぁあいっ!」 美「おわっ!?」 瑠「中学生だからって女の子に言っていいこ とと悪いことの区別ぐらい分かるでし ょ!! なぁにが、"美しくないから今日からデ ブ恵だ"ぁあ!? こーんなに柔らかくて触り心地もいいの にそんなこと言うなんて許せない!!」 美「ちょっ…!る、瑠衣落ち着いてっ! それ中学生の時だから、今の私のことで は…!」 瑠「でも、今でも2人の時"デブ恵ちゃん"っ て呼ばれてるんでしょ!?」 美「………ま、まぁ……」 瑠「じゃあ言ったのと一緒だから!! あー、もう我慢できない!アイツに文句 言ってくる!」 ガタッ!と立ち上がり、怒りに燃える瑠衣は女子の群がるアイツの所に顔を向ける。 やばい、と私は咄嗟に瑠衣を止めた。 美「ちょちょちょ、落ち着いてっ!! そんなことしたらあの取り巻き女子から 何されるか分かんないよ!?」 瑠「だからって、親友にそんなこと言われて 黙ってられないでしょ!!」 美「だ、大丈夫!もう大丈夫だから!! 一旦落ち着こ!ね!?」 瑠「…………わかったよぉ」 渋々椅子に座り直す瑠衣。 ぶすーっと私の方を見る瑠衣に私はいつも通り笑いかける。 美「…ありがとね、瑠衣」 瑠「……え?私、まだ何も…」 美「私のことで怒ってくれたでしょ?それだ けでもう充分だよ」 瑠「…美恵」 美「…それに!もうアイツのことなんて気に しないことにしてるし! この体型だって、これが私なんだって開 き直ってるしね!」 ニコッと笑うと、瑠衣は驚いた顔から少し照れたような顔をして。 私の手をギュッと握りしめた。 瑠「…も〜、美恵には敵わないなぁ〜……。 でも、もし何かあったらすぐに言って よ?約束」 美「…瑠衣……」 瑠「その時は今度こそ、アイツに1発お見舞 してやるんだから!」 美「……あははっ、ありがとう!」 瑠衣が親友で良かった。 こんなにも大きな味方が居るのなら、私はもう誰にも負けないよ。 鈴「………………」
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