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不思議なヒョウ
「……とりあえず、今日は帰るしかない、か……。」
綾は小さくつぶやくと、グッタリと起き上がって席を立つ。
机の横にかけてあったスクールバッグを肩にかけ、2年1組の教室を出た。
2つ隣の教室、2年3組のドアの前に立ち、中の様子を少し伺った。
中からガラガラという椅子を引く音が鳴り響き、綾は教師が終礼の挨拶を告げたことを悟る。
ガラッと後ろのドアが開き、いつも最初に出てくる男子が顔を出した。
綾は出来るだけ目を合わせないようにして、廊下の端による。
しばらくすると、前のドアも開いて人が流れ出してきて、1人が綾の前で止まる。
「待たせてごめんね、綾。」
「ううん、いいんだよ。3組の終礼が長いのは華子のせいじゃないんだから。」
華子というのは、綾の小学校からの友達だ。
親友、と言っても過言ではないと言える。
「それにしても、」
華子はウンザリといった表情になった。
「ほんっと風月、腹立つ。今日も風月が席替えで決まった席を嫌がったから、こんなに遅くなったわけだし。」
華子が眉を寄せていると、当の本人、風月が教室から出てきた。
風月は華子が眉を寄せて自分をにらんでいることに気づき、にらみ返す。
「この席決めたの、お前だよな。なんとかしろよ。」
「はぁ?そんな理屈で責められても困るんだけど。」
綾は、風月と華子の間の空気が悪くなってきたことに気づき、間に割って入った。
「ちょっと、やめて、よ。人に変な理屈つけるの、良くないって。」
風月は綾をチラッと見、少し笑った。
「お前、男子の溜まり場の席になった奴じゃん。気ぃ弱そーだな。」
「なっ……?」
綾が言葉を失うと、華子が風月をにらんだ。
「ひど!人を見た目で判断するのは良くない。しかも女子にだよ!?ダメに決まってるじゃん!ひどすぎる。見下した。」
華子が風月を散々批難すると、綾の腕を引っ張っていった。
風月は呆然と立ち尽くし、一人呟いていた。
「んなもん、知るかよ。」
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