《五》胡散臭いオトコたち

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二つの暗い穴が、瞳子を見下ろす。 本来なら目のあるところに眼球はなく、表情のない入道のおそろしさをより際立たせた。 「いやッ……。あっちに行って!!」 転んだ拍子につかんだ砂を、瞳子は不気味な入道に投げつける。 バサッと命中はしたが、あまり効果のない攻撃だった。 「この姿におびえておられるか。 ──ならば」 言うなり、瞳子の前から入道が消え失せる。 ホッと息をついたのもつかの間、今度は見えない何かが瞳子の身体を押さえつける感覚がした。 「いやッ!! なんなのよ、もうッ! 気色悪い! 放してよッ……!!」 『困りましたな。このような女人(にょにん)に“花嫁”様が務まるとは到底思えませぬが……』 嘆くような声が脳内に響き、瞳子は状況も忘れ、カッと頭に血をのぼらせた。 (は? なんなの、その言い草! 私がいつ、そんなモンにしてくれって頼んだのよ!) 「ふ──」 「おい」 ふざけんじゃないわよ、と、続くはずの言葉が、よく通る男の声にさえぎられた。 (何よ、邪魔しないでよ!) 声のした方へキッと目を向けると、赤茶色の短い髪の男が見えた。 緋色の上衣と黒い筒袴。動きやすそうな簡素な装いで、腰に刀を吊るしている。
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