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二つの暗い穴が、瞳子を見下ろす。
本来なら目のあるところに眼球はなく、表情のない入道のおそろしさをより際立たせた。
「いやッ……。あっちに行って!!」
転んだ拍子につかんだ砂を、瞳子は不気味な入道に投げつける。
バサッと命中はしたが、あまり効果のない攻撃だった。
「この姿におびえておられるか。
──ならば」
言うなり、瞳子の前から入道が消え失せる。
ホッと息をついたのもつかの間、今度は見えない何かが瞳子の身体を押さえつける感覚がした。
「いやッ!! なんなのよ、もうッ! 気色悪い! 放してよッ……!!」
『困りましたな。このような女人に“花嫁”様が務まるとは到底思えませぬが……』
嘆くような声が脳内に響き、瞳子は状況も忘れ、カッと頭に血をのぼらせた。
(は? なんなの、その言い草!
私がいつ、そんなモンにしてくれって頼んだのよ!)
「ふ──」
「おい」
ふざけんじゃないわよ、と、続くはずの言葉が、よく通る男の声にさえぎられた。
(何よ、邪魔しないでよ!)
声のした方へキッと目を向けると、赤茶色の短い髪の男が見えた。
緋色の上衣と黒い筒袴。動きやすそうな簡素な装いで、腰に刀を吊るしている。
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