《六》二つの条件提示

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ひったくるようにイチからネズミを取り上げた瞳子が、ホッとした表情を浮かべた。 「良かった……」 自らの手の内で、いたわるようになでる。その様に、虎太郎は思わず問いかけた。 「お前の“眷属(けんぞく)”か?」 大事そうに両手で抱える姿に、疑いもなく確認をしたつもりだった。 しかし──。 「けんぞく……?」 キョトンとした表情を返され虎太郎が言葉につまると、脇からイチが鼻で笑いながら会話に加わってくる。 「そんなチンケなのが“眷属”だとしたら、白い“神獣”サマの程度が知れますがね」 「イチ」 強い口調でたしなめたのち、虎太郎は瞳子に改めて()き直す。 「ひょっとして、“眷属”も知らないのか?」 「知らないわよ、それが何」 「……言い方が悪かったな。 瞳子は、いつ、この世界──“陽ノ元”に来たんだ?」 今度こそ確信をもって、尋ねる。 思い返すのも嫌そうに、瞳子が答えた。 「多分……昨日の、夜」 (やはり、そうか……!) 今宵は十六夜(いざよい)。必然、昨夜は満月となる。 “花嫁”を異界から“召喚”するのに、適しているとされる晩。
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