《六》二つの条件提示

6/8
前へ
/451ページ
次へ
それはイチも同様だったらしい。驚きを隠せないように瞳子を見ている。 「もちろんだ。じっくり考えてから結論をだせ。 ……と、言いたいところだが、あいにく俺の事情もお前の状況も、そうはいかないだろうな」 「え?」 「先程のような手合いが、またやって来るだろう。お前を助けてやりたい気持ちはあるが、今度はそうはいかない」 「……私が、あの男の“花嫁”だから?」 「というより、俺がそれを知ってしまったからだ。今度は、道理が通らない」 一度ならず二度までも、他の“神獣”の“眷属”を葬ったとなれば、虎太郎の“神獣”としての立場も危うく、また、育ての親である萩原家の者にも迷惑がかかる。 (それは、絶対に避けたいからな) 自分が何のためにこの国──“上総ノ国”に入ったのかが分からなくなる。 正直、“神獣”としての立場はどうでも良い。が、それを言うと、またイチがうるさいので黙っておくことにする。 「じゃあ、早めに結論をだすわ」 言って、瞳子は虎太郎達からやや離れた場所へと行く。 どうやら、手の内にいるネズミに相談しているようだが、この距離では何を言ってるかは解らなかった。
/451ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加