一家人 — 和解

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 留学生活最後のクラスがはじまった。勉強は予想どおり難しくなっている。毎日大量の宿題を熟し、予習復習に追われる。検定試験の準備もはじめた。  本来の目的であった語学留学は、中国語能力の進歩もそれなりに実感でき、学習面に於いては、充実した日々を過ごせている。  アマンダとはまた、同じクラスを取っている。彼女のほうは相変わらず漢字の書き取りに苦しめられているが、ふたりで足りないところを補い合い勉強するのは、楽しい。  曉慧は、夜の付き合いが悪くなった。  彼氏ができれば女友だちなんてこんな扱いだよね、と、アマンダは文句を言っているが、幸せそうなふたりを見ているだけで、わたしは満足だ。  ただし、突然呼び出され、喧嘩の愚痴を聞かされるのには閉口する。  吐き出したい気持ちはわからないではないが、所詮は惚気話。聞かされるわたしたちは、たまったものではない。  学校が終わった昼からは、林家滷肉飯へ通い、店の手伝いだ。林媽媽も芙蓉姐も相変わらず。あんなことを言ってしまったわたしに、いままでどおり接してくれる。  芙蓉姐は、いよいよ臨月だそう。時折赤ちゃんに蹴られ、イタタタとお腹を押さえて苦笑いしている。  わたしもお腹に触らせてもらった。赤ちゃんがグリグリ動く感触に、生命の神秘を感じる。
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