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ふたりの声に静寂が打ち破られる。我に返ったときにはすでに、月老の姿はなく。握らされたその紙を、曉慧とアマンダが興味深げに覗き込んでいた。
それは、なんの変哲もない白無地の名刺に印刷された文字——月老婚姻紹介所。ゆっくりと裏返すとそこには、所在地らしき略図があるだけ。
「月老婚姻紹介所……って、なぁに?」
「なによ? アマンダ。あんたまで知らないなんて情けない。月老婚姻紹介所っていえば、成婚率百パーセントを誇る、台北一の超有名な婚姻紹介所よ」
婚姻紹介所とはつまり、日本でいうところの結婚相談所のようなものだろうか。
「百パーセント……」
成婚率百パーセントとは、ずいぶん大きく出たものだ。
「ねえ、曉慧。成婚率百パーセントなんだったら、いっそ神様の月老にお願いするより、こっちの月老に相談したほうが、早くて確実に結婚できるんじゃないの?」
アマンダ、よく言った。それ、正論です。
「えー? だってそれじゃあ……」
「あ、そっか。別の人紹介されても困るもんね。曉慧には愛しのしゅ——むぅううう」
瞬時に顔を沸騰させた曉慧が、アマンダの口を塞いだ。
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