天空碧 — 拜拜

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「もうなんでもいいから、早くお参りしようよ。あたし、朝からなにも食べてないから、お腹空いて死にそう!」 「アマンダってば、またダイエット?」 「うん。お腹周りがちょっと気になって」  嘘つけ。  横に並んだわたしが卑屈になるくらいのナイスバディ。食べすぎたって太らない体質のくせに。贅沢な。 「それ、嫌み言ってる?」  曉慧も同じ意見だ。 「なんでそうなるの?」  言いたい放題しつつも、ひとたび神様と向き合えば、ふたりともその表情は真剣なものに。  お参りの順に沿って、まずは天公にご挨拶。その後、家内安全や商売繁盛、学力向上など、それぞれの御利益がある神様すべてと菩薩様に、名前、生年月日、住所を告げ、心のなかで丁寧に願い事をする。 「小鈴、好い人と出会えますようにって、ちゃんとお願いするのよ」 「わかってるよ」  とは言ったものの、わたしの願いは違う。  どうせバレやしないしね。 『神様、お願いします。林媽媽が元気になりますように。芙蓉姐の赤ちゃんが、無事に産まれますように』  カイくんを亡くした悲しみを堪えて気丈に頑張る林媽媽が、心安らかに暮らせること。それが、いま、わたしの一番の願いだ。
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