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「ちゃんとお願いしたでしょうね?」
「あー、したした。ちゃんとしたから、もういいでしょう?」
信用がないのはわかっているのだけれど。曉慧はしつこいんだから。
まあいいじゃないの、と、笑って見せれば、その向こうのアマンダが諦めろとばかりに苦笑している。
「ホント、小鈴は人のことばかりじゃなくて、自分の心配もしたほうがいいわよ」
「そういうあんたは、小鈴の心配ばっかりしてる」
「煩いわね。あんたは自分の心配だけしてればいいのよ」
甘茶をいただきながら、曉慧からまたお説教を喰らった。
お説教をされるのが好きなわけではないけれど、なんでもはっきり言ってくれるのは、うれしいと思う。曉慧だけではない。アマンダも、友人たちも、カイくんとその家族も。優しい人ばかりに囲まれて、わたしはとっても恵まれている。
「ねえ、ちょっと! あの人……すごく格好よくない?」
「うん?」
美しい人——老若男女を問わず、に、目敏いアマンダが指差す方向へ目を向けると、この蒸し暑さのなか、ダークカラーのスリーピースをスマートに着熟す長身のナイスミドルが、誰かと話し込んでいた。
「わっ! あれ、月老よ!」
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