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「どう? おいしいでしょう?」
焼き上げたトウモロコシやタマネギ、ピーマンなどを山盛りにした皿をテーブルの中央にどんと置いたアマンダが、自慢げに言う。
「うん。すごいよ。おいしい」
「でしょでしょ! このソース、我が家秘伝の味なのよ。野菜も食べてみて。おいしいわよー」
隣に座り込んだアマンダが、缶ビールに手を伸ばした。プルタブを開けグイッと煽り、新しい缶をもうふたつ手にして戻っていく。それはそうだ。焼き方だって飲みたいに決まっている。
「いいなぁ。私もビール飲みたい」
箸を咥えた口を半開きにしたまま缶ビールの行方を目で追う芙蓉姐が、恨めしそうにため息をつく。
「小蓉、あなたはもうすぐお母さんになるんだから。ビールは諦めなさいね」
「そうだよ、芙蓉姐。いっそこれを機会にお酒止めちゃえばいいんじゃない?」
「えー? 絶対嫌よそんなの」
新婚ほやほやで赤ちゃんまで授かり幸せいっぱいの芙蓉姐が唯一、辛いこと。それは、お酒が飲めないことらしい。
不満げに口を尖らせ曉慧を睨みつける芙蓉姐をみんなが笑う。お酒を飲まない芙蓉姐なんて、誰も想像できないようだ。
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