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「修はずっとこっちにいられるの?」
「僕ですか? 僕は——まだしばらくはいられると思いますけど。こちらに来てもうじき一年になるので、いつ呼び戻されるか、って、ところですかねぇ。こればっかりは本社次第だから、僕にはどうしようもないんですが」
お仕事じゃ仕方がないわよね、と、相槌を打つお母さんの傍らで、曉慧がまた新たなビールを開け、口をつけた。
わたしも、またまたひとくち、ビールを啜る。なぜだろう。今日はお気に入りのビールがおいしく感じられない。
彼らの話に耳を傾けながらも、ふと気を緩めると昼間の場面が繰り返し脳裏に浮かび、月老の言葉が頭のなかで木霊する。
『林美鈴——おまえの縁は、難儀だな』
見ず知らずの他人に、なにがわかるの?
『天空碧か……よくもそんなものが手に入ったものだ』
天空碧ってなに?
突然、シャーッと音が聞こえたと思ったら、眩しい光が目に飛び込んできた。咄嗟に手の甲で瞼を覆った。
「な、に? まぶし……」
「小鈴、目が覚めたかい?」
「……!……」
ハッと目を開いて声の聞こえた方向に顔を向けると、日の差し込む明るい窓を背にした林媽媽が笑っている。見覚えのある天井、見覚えのある壁紙、見覚えのある家具——キョロキョロと辺りを見回せばそこはなぜか、林媽媽の寝室で。
「えっ? なんで?」
——バーベキューは?
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