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気を取り直して茶碗の山を崩すべく取りかかった。完食できる気はしないが。
「そういえばさ、修って優しいわよねー。曉慧とアマンダがあんたを起こそうと頑張ってたのよ。でも、ぜんぜん起きなくてさ。それを見てた修が、無理に起こすのはかわいそうだから僕が運びますって、あんたを背負って媽のベッドまで運んでくれたのよ」
「うそっ? ぐっ……ごほごほっ」
「小鈴! ちょっとなにやってるの」
「大丈夫かい? ほら、お湯飲んで!」
「う……」
危うく腸詰めで窒息するところだった。
酔って正体をなくして篠塚さんに背負われ運ばれただなんて。恥ずかしすぎる。
「世話になったんだ。修に小鈴媽媽がごちそうしたいからって、ウチに連れといでよ」
「そうね。時間があるときにでも寄って、ご飯食べてもらえばいいわ」
「え、でも、そんな……」
「なに遠慮してるんだい? ウチの娘が世話になった人に媽媽がお礼をするのは当たり前だろう?」
「林媽媽、芙蓉姐……ありがとう」
「まったく、この子はまた!」
「あ、ごめんなさい」
——しまった。また他人行儀だと叱られてしまう。
「媽! これも小鈴のいいところだから。ね? そうでしょう?」
「ああ、そうだね。わかってるよ」
優しい笑顔の林媽媽に見つめられながら、山盛りの朝食を必死で食べた。
*
完食しました。
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