天空碧 — 侵入者

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 休日のランチタイムは、弁当待ちのお客さんが少なく、店内も平日ほどの混雑はない。だが、一日中メリハリなくだらだらと途切れない客足のおかげで、スタッフの休み時間がうまく取れないのは仕方がない。  夕方近くになり、疲れが出たのか顔色が悪い芙蓉姐を奥で休ませ、わたしは夜の閉店時間まで店先で注文を受け、料理を運んだ。アパートに帰るころには疲れ果て、夕食を取るのも億劫だった。 「ああ今日も、西日が暑い!」  九月半ばとはいえ、最高気温は連日三十五度にもなる台北は、秋の気候とはほど遠い。  締め切った窓。外気温の高さ。おまけに西日に炙られた室内は、日が落ちたあともまるで蒸し風呂。そんな暑さに備えつけの旧型クーラーが太刀打ちできるはずもなく。  タオルで拭っても拭っても汗が噴きだす。気持ちだけでも涼をと、部屋の照明を点さずにカーテンを開け放ち、薄暗がりのなか、硬いベッドに寝転がり目を閉じた。 「暑い……。冷たいシャワー浴びたい……」  とはいえ、起き上がる気力もない。体がだるく、少し頭痛もする。そのまま横向きに丸くなると、とろとろと意識が沈み込んだ。どれくらいの時間が経ったのか。  ふと気配を感じ、目を開けると、鼻先にぼやーっとした輪郭と、目と鼻と口らしきものが見えた。
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