青の小夜曲

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 6月中旬になり、すっかり雨にも飽きた頃。今日は久々の梅雨の晴れ間。  終礼が終わった後、荷物を纏め、クラブに向かおうとしていた私に、黒川君が声を掛けて来た。 「今日も家庭科部なの?文月さん」 「うん、そうだよ」 「今日は何を作る予定?」 「りんごのパウンドケーキ」 「わぁ!滅茶苦茶美味しそうじゃん!」  そう言って笑顔を浮かべている彼は、ここ数週間、ずっと爽やかイケメンモードのままだ。どうやら次の舞台は7月初旬にあるらしい。稽古期間が長いらしく、黒川君の人格も安定しているようだ。  「普通の男子高校生」な黒川君にすっかり慣れてしまい、今までの彼が夢だったのではないかとさえ思ってしまう。 「焼けたら、俺にも味見させてよ。待ってるから」 「え?でも時間かかるよ?黒川君、今日はお稽古ないの?」 「今日はオフなんだ」  せっかくのオフなら、早く家に帰ってゆっくりしたほうがいいのではないだろうか。きっと普段は忙しいだろうから……。そう思って、 「帰らなくていいの?」 と尋ねると、 「家に帰ると怠けそうだから、中庭で自主練しようと思ってるんだ。だから、文月さんがケーキを持って来てくれる頃には、ちょうど疲れて甘いものが欲しくなってる時間だよ」 との答えが返って来る。そこまで言うのならと、 「じゃあ、出来たら持って行くね」 と約束すると、 「楽しみに待ってる!」 黒川君は笑顔で頷いた。
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