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卓也と父親のやり取りを聞き流しながら、
(ふふっ、香澄ちゃんを誘おうかな)
私はウキウキと考えた。けれど、はた、と気づき、
(隅田さんと田辺さんも誘わないと角が立つよね)
と思い直す。
券は2枚しかないし、ファンタジーランドの入場券は値段が高いので、なんとなく誘いづらい。
(どうしようかなぁ……)
頭を悩ませていると、
「ねーちゃん、高2にもなって彼氏いないんだし、どうせ行く相手いないんだろ?俺にくれよ」
拗ねた卓也が噛みついて来た。
「はぁ~?失礼な!彼氏ぐらい……」
と言いかけて、
(いないけど)
情けなくなって口をつぐむ。
「ほら、やっぱり」
せせら笑う卓也が、憎たらしくて仕方ない。
私は思わず、
「い、いるもん!」
と言い返した。
「嘘だ」
「本当!」
姉弟の応酬に、両親が苦笑している。
「それなら証拠を見せてよ。ファンタジーランドで彼氏と一緒の写真撮って来たら信じてやる」
「分かったわよ、撮って来るから、見てぎゃふんと言うがいいよ!」
つーんと横を向いたら、卓也も同じように横を向いた。
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