夢の国で歌えば

4/12
前へ
/97ページ
次へ
 弟の言い様にプリプリしながら自室へと戻ると、私はベッドにダイブした。 「あーあ、余計なこと言っちゃったな……」  売り言葉に買い言葉とは、まさにこのことだ。 (彼氏のフリ、してくれる人……)  そう考えて、咄嗟に黒川君の姿が思い浮かんだ。 (ないない、それはない。きっと来てくれない。だってほら、仕事で忙しいだろうし)  慌てて手を振り、脳裏からその考えを追い出す。けれど、 (でも黒川君が元気にしているのかどうかは気にはなるな……) テレビを見ながら考えていたことが、心の中によみがえった。 (お祭りの時は、やけに落ち込んでいたから……)  とりあえず、ドラマに出ていたぐらいだから、仕事には行っているのだろう。 「…………」  私は瞼に手の甲を当てた。 (私が心配しなくても、きっと大丈夫)  しばらくの間、迷った後、私はベッドから身を起こし、充電していたスマホを取り上げた――。 *
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加