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弟の言い様にプリプリしながら自室へと戻ると、私はベッドにダイブした。
「あーあ、余計なこと言っちゃったな……」
売り言葉に買い言葉とは、まさにこのことだ。
(彼氏のフリ、してくれる人……)
そう考えて、咄嗟に黒川君の姿が思い浮かんだ。
(ないない、それはない。きっと来てくれない。だってほら、仕事で忙しいだろうし)
慌てて手を振り、脳裏からその考えを追い出す。けれど、
(でも黒川君が元気にしているのかどうかは気にはなるな……)
テレビを見ながら考えていたことが、心の中によみがえった。
(お祭りの時は、やけに落ち込んでいたから……)
とりあえず、ドラマに出ていたぐらいだから、仕事には行っているのだろう。
「…………」
私は瞼に手の甲を当てた。
(私が心配しなくても、きっと大丈夫)
しばらくの間、迷った後、私はベッドから身を起こし、充電していたスマホを取り上げた――。
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